「温泉王国・小国郷」寒い冬こそ、ぽかぽか温まろう

葉隠館「浪漫の湯」

  • 泉質:弱食塩泉で無色無臭、温度は高め
  • 温泉の種類:蒸し風呂、五右衛門風呂、
  • 文化度:★★★★★
  • 入浴料:500円
  • 宿泊料金:平日8,000円〜、休前日10,000円〜。

 長い歴史を持つ杖立温泉は、幾度となく映画や小説の舞台になりました。性に目覚めた男子高校生がお風呂を覗いたりする、ちょっとエッチな映画「まんだらやの良太」や、寅さんが留守番の間、他のご一行が「九鬼谷温泉」という架空の温泉(実は杖立のこと)を訪れた昭和48年の「男はつらいよ」など、素朴な湯治場としてスクリーンも登場しているようです。またここ「葉隠館」には、『麦と兵隊』で知られる文豪・火野葦平が、杖立温泉を舞台にした小説『花扇』を執筆した部屋が残っています。

 ロビーで薬膳茶をすすりながら、オーナーの権藤さんに、杖立の歴史について詳しく教えてもらいます。

権藤さん:「杖立温泉は1700年の歴史があり、応仁天皇がこの地で生まれたときに産湯に使われました。それからは、湯治客でにぎわう有数の湯治場として栄えました。江戸時代には、福岡の柳川藩主が、母親孝行に湯治に来ていた際に他の藩主と討ち合いになった「杖立騒動」という事件も起きています。

 戦前ここ一帯は、当時の炭坑景気のおかげで、筑豊地方の炭坑マンの歓楽街でした。明日火薬が爆発するかも、トンネルが崩れて死ぬかもしれないという死と隣り合わせの緊張感の毎日のなか、しばしの憩いの場所だったのです。貧しい農家の娘たちが口減らしのためここの置屋に売られ、その置屋は売春禁止法が成立した終戦まで残っていたんですよ」

 なるほど・・・杖立温泉は福岡のお客さんが多いそうですが、こういう歴史的背景もあったんですね。さらに権藤さんは、昔の杖立の風景を写真や文献で見せてくれました。杖立川の両岸に立ち並ぶ素朴な宿、たちのぼる湯煙、全く変わっていません。昔は河原に露天風呂が並んでいたのが、戦後に内湯が作られたそうです。

 さてお風呂ですが、蒸し風呂はもちろん、昔なつかしの五右衛門風呂がありました。子供のころ里帰りしたときに入ってたな〜。童心にかえります。浴槽の下が熱いので丸い板を踏みながら入る、ということを今の若い人は知らないそうです。全く、最近の若い者は・・・って、このセリフはおばさん予備軍?

 猫がちょこちょこと歩き回る旅館の中は、純和風の古風な作りながら、なんだか摩訶不思議な空間です。2階に上がると、とつぜん東屋風の屋根付き部屋があり、中には囲炉裏があります。この囲炉裏で鍋料理や田楽料理が味わえます。他にも、薬膳料理や漢方茶も人気です。壁一面には優雅な浮世絵が描かれており、あまりに文化的すぎる雰囲気を醸しだしています。やれやれとトイレに立つと、ドアの向こうは一面黄金色でまぶしい!壁一面が金箔塗りなんです。こうやってあちこち探検できる旅館も珍しい。

 権藤さんが最後に通してくれた部屋は、かつて「花と龍」「麦と兵隊」の作者・火野葦平が杖立温泉が舞台の小説を執筆した部屋です。

 従軍記者だった火野葦平は昭和13年にデビューし、戦後は九州を漫遊します。杖立を訪れ、1週間ほど滞在して「幻燈部屋」(6部構成)の第4部「花扇」を完成させます。花扇は、久留米の高利貸し屋に買われる芸者の名前で、彼女には好きな人がいたが恋かなわず、県境の湯の美岳から川に身を投げたという悲恋話です。

 日当たりの良い最上階のこじんまりした部屋は、そのうち火野葦平ギャラリーにする予定だそうです。

●お問い合せ
葉隠館

阿蘇郡小国町杖立温泉 (0967)48-0246
国道212号線沿い、日田ICから車で40分 公共駐車場あり
食事休憩4,000円〜。

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