変わり種グルメの旅in熊本市 料理人たちのこだわりが生んだ品々


 JR熊本駅から徒歩1分、黄色の派手なビルに「駅前地ビール館」の看板が見えてきます。この辺は、JRはもちろん路面電車や各バスの路線が発達し、交通の便がとても良いところです。

 この店では、オリジナル地ビールレストランで生の地ビールが飲めて、お土産に瓶詰めの地ビールを購入することもできます。地ビールは、同ビルのビール工場で作られた新鮮できたてのものです。熊本の場合、地ビールの店はたいてい駐車場の広い郊外に多く、運転手役の人は飲めずに寂しい思いをするものです。でもここなら全員が飲めますね。場所柄、県外のお客さんも多いそうです。

 店内は木を基調とした内装で、船舶をイメージした造りになっています。ジャズの生演奏などのイベントには、積極的に協力しているそうです。入ってすぐにはカウンターバーもあり、大人のシックな飲み会にもぴったりです。

 1階のビール工場に直撃インタビューです。工場長の松尾さんがせっせと働いていました。

〜こちらの地ビールの原料は何ですか?〜
松尾さん:「モルトと呼ばれる麦芽です。ドイツとチェコから輸入しています。うちは麦芽100%で、副原料は一切含んでいません。あとは、麦芽糖などの糖分を炭酸ガスとアルコールに分解する酵母でしょうかね」

 なんと松尾さんは、輸入先でもあるビールの本場チェコのビール職人に、ビール作りを指導してもらったそうです。本場のビールにできるだけ近づけたいという思いが、ひしひしと伝わります。

〜地ビールにはいくつか種類があるみたいですが、味はどのように変化を出すんですか?〜
松尾さん:「味の違いは、麦芽の粉砕の具合で微妙に変わります。また酵母の状態でも、濃くなったりあっさりになったりしますよ」

 なるほど、微妙なところですね。全く同じ味を出すのはかなり大変そうだ。

〜できたて地ビールと市販のビールの違いは?〜
松尾さん:「もちろん鮮度が一番ですが、酵母が生きている状態なのが地ビールです。酵母は温度変化で痛みやすいので、市販の場合はやむなく酵母をろ過しなくてはなりません。生の良いところは、この酵母が生きたままの良い状態で飲める点なんです」

 「市販のビールは酵母が死んだ匂いがする」ともおっしゃった松尾さん。そんな匂いが分かるまでビール造りを極めた職人魂に、ただ驚くばかりです。
 この”生きた酵母”には、整腸作用、鉄分の吸収の促進、エネルギー代謝の活発化、酵素や細胞の活性化などのすぐれた効果があります。更に酵母の成分の中には、ビタミンや必須アミノ酸、各種ミネラル成分、植物繊維などが豊富。これによって、便秘が解消され、胃腸の働きが活発になり消化機能も高まるので、食事も楽しくなります。また貧血など、鉄分不足気味の方にもぴったりです。美容と健康にいいからと、と女性の愛飲家もおおいとか。
 今は熊本市の水にあったビールを作っているけれど、松尾さんのこれからの目標は、外国の水の状態を作り出す技術もつけて、外国の本場のビールの味を出すことだそうです。そのうち、ロンドンの水からできた”ロンドンの本場のビール”とかが、店頭に並ぶかもしれませんね。楽しみです。

 さて、松尾さんの自信作のビールの紹介です。左からチェコ生まれのピルスナー。日本のビールはだいたいこのタイプで、ホップの効いたおなじみの味です。
 そしてダークラガー。いわゆる黒ビールです。コクのあるやや苦い大人の味です。これもチェコのビールです。
 次にヴァイツェン。小麦の麦芽を使った甘酸っぱい味のドイツビール。飲みやすいので人気。
 一番右がペールエール。香りがフルーティーで、味は苦めの英国ビールです。

 ビールの試飲をさせてくださったのは、社長の鳥井さんです。

〜できたてビールの一番の特徴はなんですか?〜
鳥井さん:「鮮度はもちろん、味が落ちないことが重要です。ビールの場合、温度が変化したり揺すられたりしたら、たちまち味が落ちてしまいます」

〜”オリジナル地ビール”ということは、ここで独自にビールの種類を作られたんですか?〜
鳥井さん:「いいえ。ピルスナーやペールエールなどどれも有名なビールです。大事なのは、麦芽の種類の違い、酵母の違い、配合の比率、これら全ての要素で味や色の違いを出し、うまく組み合わせることで、”ここだけの味”というオリジナル地ビールができるということです」

 なるほど、やっぱり同じ味を作り出すのは難しそうです。ビールを作るのは本当に大変なんですね。

 お待ちかねの酵母入り生ビールの試飲です。
 一番人気のヴァイツェン。ドイツのバイエルン地方独特の小麦を使ったビールです。淡い琥珀色のビールがとてもきれいです。その涼しげな液体をぐっと喉に流し込んでみました。のどごしがさわやかで、ほどよい冷たさが胃に心地よい。市販のビールのような”苦み”をあまりを感じさせず、すこし甘酸っぱいフルーティな味は、上品でやわらかく、口あたりも良い。とても飲みやすくて、爽快感という言葉がぴったりのビールです。

 そして、英国生まれのペールエールです。ヴァイツェンよりやや色は濃いめです。においは甘くフルーティーですが、舌の上で転がすと、キリッとした苦みに刺激を受けます。のどごしはスッキリで、ビール自体は麦芽の風味たっぷりのコクのある豊かな味が特徴。コクが強いのが常識とされているイギリスビールの中で、特にキレ味が良いそうです。ペールエールのうまさをいっそう引立てるクリーミーで繊細な泡立ちがふんわり表面を覆っています。辛辣なジョークを飛ばす英国人の気質をそのまま受け継いだような辛口ビールです。飲んだ後もさほど満腹感はなく、自然とお腹にすっと入っていく感じです。アルコールもほどよく、気持ちよく酔えそう。
 生きた酵母のおかげで食欲も湧き、消化も良いので食べることも楽しくなります。市販のビールが少し苦手な私も、できたて地ビールならいくらでもいけそうです。

 料理のほうは、フランスパンをまるまる割った、超ロングなガーリックトーストがユニーク。また、ドイツ生まれのアイスバイン(豚のすね肉)2,500円(要予約)をはじめ、ビールがすすみそうな辛口のつまみ各種がずらり。もちろん、辛子蓮根や馬刺など熊本の郷土料理もありますよ。

●お問い合せ
駅前地ビール館
熊本市春日2丁目3-21
TEL(096)325-3533
営業時間:平日16:30〜23:00、日曜祭日11:30〜23:00。年中無休。
4人以上4,000円から、2時間の飲み放題コースも用意してあります。地ビール、ワイン、焼酎、日本酒、ソフトドリンクが対象です。料理はサラダ、パスタ、肉料理など8品付き。[金額は、1999年6月30日現在]

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