和食講座
引き続き、「日本料理 おく村」の女将の奥村さんに、和食の形式、マナーについて教えていただきます。おく村は和食のマナー教室を実施しており、女学生が礼儀作法を学びにくるそうです。
奥村さん:「和食にはいろんなマナーや決まり事があり、どれもちゃんと意味を持っているんですよ。和食のマナーや伝統を伝えていくのも私たちの使命と考えております」
●会席料理とは?
まず、料亭で一般的に出されるのが会席料理。この会席とは、江戸時代以前の公家や武家の儀式で出された本膳料理をベースにした料理で、江戸の豊かな時代になると、裕福な町人や商人も簡略化した形で嗜むようになりました。同じ「かいせき」でも、「懐石」は抹茶をおいしくいただくための茶道の作法による料理です。
●会席料理の形式
会席料理の基本は、前菜→吸い物→刺身→焼き物→煮物→揚げ物→蒸し物→酢の物→ご飯・留椀・香の物→果物(又は水菓子)の順番です。
●会席料理のマナー
和食を食するときには、厳密にいえばかなり多くのマナーがありますが、今回は箸使いと懐紙の使い方のみを紹介します。
奥村さん:「和食では、「箸に始まり、箸に終わる」というほど、箸使いが大切です。箸は常に体と並行に動かすと思えばいいのです。箸を取るときは、右手で箸の中央をつまみ、左手を下から添えて手元に引き寄せます。そして、右手をすべらせて、いつも持つ位置まで持っていき、箸を持ち直します。汁を吸うときも、いったん左手の人差し指と中指にはさんでから、右手で持ち直して箸置きに置きます。箸置きがなかったら箸袋を折って即席の箸置きを作ります。どんな料理であろうと、基本は一口大に箸で割って口に運ぶことです。なるべく箸の先端だけで食べるようにしましょう。いかに汚さず食べられるかがマナーです。使い終わったお箸は、箸袋に戻し袋の先を3センチほど折っておくと、使用済みだと一目でわかるでしょう」
四苦八苦しながら、なんとか正しい箸使いを実践してみました。普段何気なく使っているものほど、マナーには疎くなってしまいますよね。気をつけなくては。マナーを意識して食べると、心なしか仕草もおしとやかになってきます。
奥村さん:「会席料理を食べるときは、懐紙を一条持っていると便利ですよ。お刺身を口に運ぶときにお醤油が垂れないように下に添えたり、店の者に伝言を書いたり、お金を包んだりできて、万能です」
今までお刺身を食べるときにはワサビを醤油に溶いていましたが、奥村さんからは、ワサビは身の上に載せるよう勧められました。なるほど、上品で、よりおいしく食べられますね。また、白身、貝、マグロというように、味の淡白な順に食べていくと、それぞれの持ち味がよくわかりますよ。つまのシソの葉や大根、海草などは、飾りであると同時に、魚の臭みを消すお口直しの意味もあるので、気になる人は食べましょう。
●お店の心遣い
会席料理を提供する側の心遣いについても触れておきます。
奥村さん:「基本的には料理は一品一品持ってきて、食べられたらすぐ下げます。ただ、料理に口を付けないままじっくり眺めて堪能しながらお酒を飲まれる方もいるので、一概には言えませんが」
〜下げるタイミング、難しそうですね〜 奥村さん:「最も床の間に近い席に座っている正客の食べる早さ、タイミングに合わせます。宴会の席は、招待された正客と、その方をもてなす亭主、その亭主の支持を受けて動く末席の人から成り立っています。ただ、どの席に座ってらっしゃる方でも、食べる早さには注意したほうがいいですよね。なるべくゆっくり、みんなと同じテンポで食べすすめると、料理の進行はうまくいきます。そうはいってもお酒が入るので、食べる早さはバラバラになってしまうんですけどね。それと末席の人は、人間関係や正客の味の好みや会社のことなどをきちんと把握しておいてください。系列のビールやタクシー会社など、分からないときは尋ねることがありますから」
宴会の席をもうける時には、客の側もそれなりの心構えと準備が必要なんですね。
〜みなさん、会席料理のマナーを勉強して来られますか?〜 奥村さん:「いえいえ、そんなわざわざ勉強されなくても、ただおいしく召し上がっていただくだけでいいんですよ。お酒が入るから、どうしてもくだけた感じになってしまいますものね。そんなに肩肘張らないで、ゆっくりお食事を楽しんで下さい。服装も気兼ねなく過ごせるもので結構ですよ」
そうはいってもやはり、基本的なマナーを頭に入れておくだけでも、立ち振る舞いは変わってくるものです。より気持ちよく、よりスマートに、会席料理はいただきたいものですね。 奥村さん:「とりあえず、どんな席でどんな方を招待するのかを予約の際に女将に伝えておけば、あとは全て店にまかせてください。献立も、お客さまの年齢層や体調、味の嗜好によって柔軟に変更できるし、いかに個人の好みにあわせて料理するかは、板前の本懐ですから」
より客ひとりひとりに合った料理を作るか、そしてお客さまの舌を喜ばせるために工夫を重ねるところに、会席料理の真髄があるようです。 |