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熊本城の西側、城下町の情景をとどめる古城堀端の一角に、「日本料理 おく村」がその近代的かつ優美な佇まいを見せています。 |
おく村の女将、奥村紘子さんに、お店の歴史についてお話していただきます。
奥村さん:「おく村は、昭和初期に創業し、もとは魚の仲買から始まりました。以前は千坪くらいの広さがありましたが、リニューアルしてコンパクトになりました。さらに、今までは接待中心でお値段も12,000円からでしたが、現在は主に披露宴、結納、法事、婚礼などご家族の行事に利用していただいています。結納の時は私どもが仲人の役目もいたしますので、こちらに全てまかせてください。さらに金額のほうも、お手軽会席が5,000円から、ランチも3,000円からとお手頃な値段で召し上がれます」 「婚礼が終わったら、このすぐ先にある清爽園という公園で、ご家族揃って記念撮影をされますよ」
熊本城二の丸につづく坂のふもとにあり、神風連の乱の跡地と言われる純和風の公園です。池にかかる石橋の上が撮影ポイント。とても絵になりますね。
店内は、上品なお香の香りがただよい、しんと水を打ったような静寂に包まれています。季節の花や掛け軸がさりげなく飾ってあり、質素で細やかで洗練された和の美が堪能できます。絵画や掛け軸、陶芸などインテリアはすべて本物。著名な芸術家の作品があちこちに展示してあり、ちょっとした美術館です。お客さんの中には絵画鑑賞が目当ての人もいるとか。
奥村さん:「手をかけた料理を舌で楽しむと同時に、嗜好を懲らしたインテリアを目にして楽しんでいただきたいです」。
快適に優雅にお食事をする空間づくりへのこだわりをひしひしと感じます。
壁紙には和紙を使用しており、温かみのある色彩に囲まれた和室です。足が悪い人や正座に慣れていない人のために、掘り炬燵の席も設けてあります。接待はもちろん、代々継承している「のしの儀」という婚礼、祝いの席にかなう正式の儀も執り行っています。
和室に飾ってあるこの人形は、人間国宝・平田郷陽(ごうよう)作の「打球打」という作品です。よく美術館にも展示されるほどの名作だとか。どんなインテリアにも妥協を許しません。
一般的には、料亭イコール和室のイメージがありますが、おく村には洋間もあるのです。こちらの床もフランス製のタイルを使用しているこだわりよう。
また茶室「一庵」では、お茶会も開くことができます。三畳中板形式にしたがって、桜の一枚板と梅の木が使われています。おく村で代々使われてきた木材をそのまま移築したそうです。本物の料亭は、建物にも歴史と風格を感じます。
さて、料亭の一番の見せ場である料理へのこだわりを伺いましょう。 奥村さん:「私と板長である主人は、時には田崎市場に足を運び、一番良い旬の食材を選ぶんですよ」
ええっ、女将さん自ら仕入れに行かれるんですか?興味を持った私はさっそく田崎市場に行ってみました。そして仕入先の福島鮮魚で、食材を厳選する女将さんとご主人の真剣な眼差しを目の当たりにしました。素人から見てもかなり上質の魚介類が並んでいます。この朝は、よく太り身がしまった天然の鯛を購入されていました。
奥村さん:「その時の一番いいものを仕入れてきて当日献立を立てます。仕入れの内容によって臨機応変に献立を考えることができる、これが料亭のいいところです。お客さまからのご要望があれば、できるだけ沿うようにいたしますよ」
今回、私たちが希望した料理は、県外からのお客さまをもてなす際に喜ばれる郷土の会席です。
- お通し(小鉢、先付けともいう)は、酒を盗んででも食べたいほど美味と評判の「イカの酒盗(しゅとう)」。山芋とハリネギがのっており、山芋がふんわりイカの身を包んでいて、タレもしつこくありません。
- 季節のものを盛り込んだ前菜です。1と2は酒の肴としてあらかじめ席に用意されており、乾杯して次の酒を待つ間に食べます。
- 次に吸い物。これは料亭が最も力を入れる料理です。秋にふさわしくネギをススキに見立て、長芋をかつらむきしたものを乗せた芸術的料理です。上品なだしの風味に思わず顔がほころびます。
- 続いて刺身。郷土料理の場合はもちろん馬刺になります。冷凍肉は一切使わず、特上の馬肉の新鮮なにおいがただよってきます。(写真は7人前)
タマネギをくるむと大変さっぱりといただけます。馬肉は驚くほど柔らかくてほんのり甘く、舌の上でとろりと溶けてしまいそう。こんな旨い馬肉を選べるのも、板前の力量のたまものです。
- 煮物にはもちろん季節のお野菜を使っています。
- 焼物は、まながたの西京焼き。西京みそに漬けた魚は繊細な旨みをにじませています。生臭ものなので、ネギや野菜が添えられています。これで口の中を整えて、次の料理を待ちます。
- 変わり鉢は、その時によって酢の物や揚げ物、蒸し物になります。今回はもちろん、熊本を代表する郷土料理・辛子蓮根と一文字のぐるぐる。
前者は老舗で厳選した極上の品で、蓮根の歯ごたえと麦味噌を練り込んだ辛子のツーンとした辛さにお酒が進みます。後者は、ネギをゆでて柔らかくしたものをねじり、酢みそに付けて食べる料理です。「おく村の酢みそはさっぱりしていると好評なんですよ」と女将さん。おっしゃるとおり、酢の独特の酸っぱさは控えめにおさえてあります。
お酒が飲めるのはここまでです。
- 茶そば(又はごはん)をいただきます。
麺はコシがあり食べやすい上、抹茶の風味が喉ごしさわやかで、つゆとの相性も抜群です。
- 汁物は、郷土料理の場合はだご汁が出てきます。
小麦粉でできただごに、南関あげ、しいたけ、にんじん、鶏、大根、こんにゃく、ごぼう、ネギなど一つのお椀に実に多くの野菜が盛り込まれています。とてもヘルシーなおふくろの味です。ちなみに、熊本で汁といえば白味噌かしょうゆを指すそうです。
- 果物で口をさっぱり潤して、会席料理は終了です。
奥村さん:「ご高齢で歯が弱い方には、料理に隠し包丁を入れて食べやすく、柔らかくしておきます。これは、お客さまに食べる手間を掛けさせず、恥をかかせないためです。また、青魚など好みが別れる食材はなるべく使わないようにしています。また、なるべく食材の形や風味を壊さず、素材の味そのものを活かし、目で見て美味しく、舌で味わい旨い料理を心がけています」
料理ひとつにしてもこの気配り。おいしくいただけないはずはありません。最後に、女将さんに熊本の食文化について尋ねてみました。 奥村さん:「熊本という土地は、海の幸山の幸どちらも豊富です。素材そのものが良いので、無理して料理という格式にこだわる必要はありません。変に細工を加えるよりは、"食材そのもの"を提供するのが一番なんですよ」
そういわれると、代表的な郷土料理…馬刺、からし蓮根、一文字のぐるぐるなどは、素材の良さに尽きるものばかりですね。さらに、おく村ならではのサービスについてお話していただきました。 奥村さん:「リニューアルしたおく村は、コンパクトで使い勝手の良い点が特徴です。利用される人数や用途によって、大広間にも掘り炬燵にも普通の和室にもなりますので、どのような会合にも対応できるようになっております。さらに、店内の段差を減らしたりエレベーターを設けたりして、バリアフリーにも対応しております」
また、もっと気軽に和食を楽しんでほしいと願いを込めて、カウンター席も用意してあります。お昼に足を運んで、そのきめ細やかなサービスと心遣い、本物の日本料理の味、料亭が持つ独特の雰囲気を感じるだけでもいいですよね。
ランチは3,000円からとかなりお得です。
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