市電でのんびり市内散策/交通局の紹介

インタビュー1

 市電の歴史についてお話しして下さるのは、やさしそうな笑顔が印象的な電車課の伊藤さんです。まずは市電の利用方法について尋ねてみます。

伊藤さん:「通勤・通学にはもちろん、観光客の方や生命保険のセールスの方が一日乗車券で市内をあちこち回られています」
生活の足、観光、ビジネスとなんでもござれの市電です。車で移動すると駐車場代もバカにならないし、駐車場を確保するのも一苦労ですものね。路線マップを見ると、市内の主要な観光地や繁華街をきちんとカバーしているのがわかります。・・・ん?

路線が二号線と三号線しかありませんが、どうして一号線がないんですか?

伊藤さん:「実は昭和40年代まで、一号線から七号線まであったんですよ」

 えっ!?七つも路線があったんですか?

伊藤さん:「戦時中はガソリンが規制されていたので、電気で走る市電が活躍していました。昭和40年代までは軌道の長さは現在の倍の25kmもあったし、JR南熊本駅やJR川尻駅などの駅にも連結していました。健軍町までは軍事工場で働く工員さん達を運ぶために延伸されました。」

 まさに市内を縦横無尽に走っていた七つの路線、今も現役だったらかなり便利だったのになあ。

伊藤さん:「しかし、昭和40年代後半になると自家用車が普及してきて、市電は存続の危機にさらされました。当時は車も軌道内に進入が許されており、渋滞時には自家用車が軌道に入ってきて電車を追い越していました。そうなると当然車の方が速いですよね。しかも電車の方は進行が妨げられて、ダイヤ通りに運行するのが難しくなりました。さらに車体はどんどん古くなり、エアコンも付いていなかったので、次第に客足は遠のいていきます。そして、昭和54年までに七つの路線をすべて撤廃することが市議会で可決されてしまいました。撤廃後はモノレールに代替される予定でしたが、その後のオイルショックのため予算が捻出できず、いちおう二・三号線だけ残すことにしました。これが今まで残っている路線です」


 熊本市から市電が消えるはずだったなんて、ぜんぜん知りませんでした。

伊藤さん:「ところがその後、車社会の弊害が徐々に深刻化してきます。排気ガスによる環境汚染、騒音問題、慢性的な交通渋滞、駐車場を確保するために郊外に店が集中したことによる市街地の空洞化、高齢者や身障者など交通弱者の発生など・・・。そこでもう一度、環境や福祉や市街地の発展などの面から路面電車を見直そうという気運が高まってきたのです」

 「チンチン電車」として過去の遺物となりつつあった市電が、環境や福祉にやさしい未来型の交通機関へと変身を遂げたのです。なんてドラマティック。ちなみに、全国で市電がある都市はどれくらいあるんですか?

伊藤さん:「地方中都市を中心として全国に19都市運行しています。国の補助制度もスタートしましたし、建設費も地下鉄の20分の1程度とかなり安いので、路線復活や新規導入の動きも多く見られますよ」

 19都市ですか、けっこう多いんですね。きっとどの町も「うちの市電が一番!」と思っているんでしょうね。

それでは、熊本の市電はここが違う!という点は?

伊藤さん:「熊本人は”わさもん”(新しいもの好き)ですからね、とにかくどこよりも新しいものを取り入れたがるんですよ。冷房車、省エネのインバーター電車、超低床電車・・・。あと自家用車のドライバーのほうも、”軌道内は立入禁止”をきちんと守ってくれるマナーの良い方が多いのが熊本の自慢です」

 おっ、なんだかいいことづくしだなあ。でも正直な話、小心者の私は、軌道内に車で入るなんてできませ〜ん。だっていつ電車が来るかと思うと、ドキドキしますもの。

市電にまつわるイベントとかありますか?

伊藤さん:「以前は年に一回交通局を開放して、市電について学び、体験し、遊んでもらうイベントを開催していました。電車のデザインコンクールでは、プロのデザイナーさんも参加して、かなりハイレベルな作品が生まれました。らくがき電車という企画もあったのですが、いかんせん自分の名前や悪口などを書く人がいて、大変でした・・・」

 伊藤さんの乾いた笑いが同情を誘います。落書き自由だからって自分の名前を書いてどうするんじゃ〜!

最後に、これからの市電について

伊藤さん:「二号線をさらに東の団地まで延長してほしいという要望もありますし、最新型電車もどんどん導入したいですね。さらに快適性と定時性を高めてバスとの差別化を図り、イベント時には増編成を組んだりして、より便利な交通機関として発展していきたいです」

 他にも、電停同士が100mしか離れておらず「歩いた方が早いんじゃ?」と思わせる場所があるとか、朝夕の電車の超満員ぶりとか、いろんな話を聞かせていただきました。伊藤さん、これからも市電の発展のために、頑張って下さいね。

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