よく晴れた冬の午後、小麦粉と油のかおりに包まれた製麺所。井形さんはじめ5人の女性が、二本の棒に八の字に巻き付けられた麺を、竹棒2本を操って細く細く延ばしています。
麺の材料:小麦粉に水と塩を加えてこね上げた生地を平たく延ばして、小指くらいの太さに丸めたもの。(※麺同士がくっつかないように油がぬってある)ちなみに最初はこれくらいの長さ。
竹棒で麺を"割る"ようにしてシュッシュッと漉き、細く細く延ばしていく見事な手さばき。信じられないほどの引きと張りで、「絶妙の力加減だなあ。よく切れないなあ」と感心しきり。習得するのに4〜5年はかかる職人技です。ちなみに、より延びるのが上等な麺。最終的には、20cmくらいだった麺がなんと4m!まで延びてしまいました!
井形さん:「天気や粉の状態、塩と粉と水の配合によって、麺の柔らかさも手応えも全然違うとですよ。だけん、もっと力ば入れて延ばそうとか、これはむりやり延ばしてもダメ、っていうのはカンに頼るしかなかとです。寒かときは麺の縮むけん、一番気ば使いますね。精神的にキツかですよー。」
私がやったら、麺はブチブチ切れるわ、私の神経もブチブチ切れるわで仕事にならないでしょうね。そしてさらに、麺の細さにビックリ!!直径はたったの0.1mm(シャーペンの芯と同じ)!すごい!「一本一本手で延ばすけん、太さがバラバラでしょ?ばってん、そこが味のあるとですよ。」と井形さん。そんなそんな、せいぜいコンマ1mm単位の差で、私には想像もつかない世界ッス!真っ白な細い麺が幾重にも連なり垂れ下がっているようすは、まるで優美な滝のようにも、屋号の通り「雪の糸」にも見えます。
井形さん:「この仕事は、カンが良か人、手先が器用か人、やさしく丁寧に麺に接する人じゃなかとダメです。"ばさらか"(粗い)人はどぎゃんもならんですよ、アッハッハ」
うう・・私は「ばさらか」けん、やっぱり職人には向いとらんです・・。
さて、延ばした麺は、そのまま天日で2時間ほど干します(雨の日は屋内で木炭を焚いて乾燥)。「自然乾燥だけん、今日んごて晴れて、適度に風んあって、寒か日が一番。寒か季節に作った"寒ぞうめん"は、冷やそうめんにすっとおいしかですよー。水につけててもふやけんでコシがあるとです。」と、井形さんが目を細めて語ってくれました。ガクガク震える私をよそに、黙々と作業をされる職人さんたち。お見それいたしましたっ!!
扇風機で1時間乾燥させて仕上げです。太さを揃え、長い麺は切りそろえて「白髪そうめん」に、短い麺は切り曲げて真ん中を紙で結わえて「曲げそうめん」に。ちなみに「白髪そうめん」は猿渡製麺所さんのオリジナルブランド。「それだけ細く長く延ばせるってことですよね!」と私が興奮気味に言うと、井形さんは「アハハハハ」と照れ笑い。職人さんたちが丁寧に手延べした南関そうめん、今年の夏はこれにキマリ!
雪の糸素麺本舗(猿渡製麺所)
玉名郡南関町大字
(問)(0968)53-2106
営業時間:10:00〜17:00(夏は〜20:00)。定休日:日曜。
曲げそうめん(5本)1,000円〜、白髪そうめん(11本)2,800円〜。 |