標高700mの広々とした高原に建ち、頭上にはぐるりと360度空が広がっていて、星の観測にはもってこいの場所。気象的にも、空気が澄み、晴天率も高く、観測のしやすさでは全国で3位になった実績もあるほど。清和村観光の目玉の一つとして、年間2万人が訪れます。獅子座流星群のときは3,000人もの人が押し掛けたそうです。
天体観測ということは、やはり星空がメイン。夜遅くなるので帰りが心配、という方のために、ちゃんと宿泊キャビンが備えてあります。現在10棟が建ち、それぞれビーナス(金星)、ジュピター(木星)、ベガ(織姫星)など星に関係する名前がついています。ロマンチック〜。キャビン内はバス・トイレ・キッチン・冷蔵庫・食器・調理器具などを完備していて食材も提供されるとか。これなら大人数でも大丈夫ですね。また、1999年4月にバーベキュー中心のレストラン「星座の森」がオープン。開放感たっぷりの高原でバーベキュー、食欲をそそられますね。
高校時代、地学を選択してしまった私。星の速さは何光年だの、宇宙はどれくらい広いかなど、天文学的数字にボーっとなりつつ、入試のために必死で勉強した苦い思い出がありますが、大変だったわりには、全然身についていません。はっきりいって天文学には、基本的にアレルギー体質なんです。だから今日は「天文学」を勉強するのではなく、「星のロマン」を追求することにします。
とはいいながらも、この天文台に勤務している折尾さんに、星について説明してもらいます。笑顔を絶やさない穏やかな方です。「地元出身で、子供の頃から自然と星に興味を持ち始めました。部活の帰りにはいつもこの星空を見ていたものです」そんな風に自然な成りゆきで、星に興味をもつような環境だったら、私のような天文学アレルギーの子供はいなくなると思うんだけど・・・。昔からスターフェスタが行われていた清和村には、やっぱり星に夢中になる人が多いそうです。その関心の高さが、天文台が建てられるきっかけにもなりました。
この天文台から観測されたアンドロメダ星雲やヘールボップ彗星、金星や土星などの写真が壁にたくさん飾られています。折尾さんが、目を輝かせて説明してくれます。「1996年の春に百武彗星を観測したときは、白い大蛇が夜空を覆い尽くしているようにも見えましたよ。あれは凄かったですね」
私が個人的に「オオーッ」と思ったのは、輪がはっきりと映っている土星の写真。折尾さんの話では、望遠鏡のレンズをのぞき込んでいるお客さんに「これは本当に土星の輪ですか?スライドを見せてるんじゃないですか?」と言われるそうです。本物やっちゅうねん。でも実際、土星の輪を、自分の目で見ているなんて信じられないかも。
せっかく天文台に行く機会があっても、雨の日だったり、昼間しか行けなかったり・・・でも、ご安心を。館内で季節ごとの星座を紹介するVTRを上映しているので十分楽しめますよ。
私もきたるべき夜の観測にむけて予習しておくために、春の星座のVTRを見ました。春の夜空に見えるのは、春の大曲線、春の大三角形、からす座、乙女座のスピカ(一等星)、かに座、しし座など。星座の解説にはそれぞれギリシャ神話のエピソードが付いていて、うまくからめて紹介してあります。そうそうこれぞ私が求めていた「星のロマン」。
有名なのは、北斗七星(おおぐま座)と北極星(こぐま座)のエピソード。大神ゼウスがある美しい女性と恋に落ち、その子供は立派な猟師になります。ゼウスとの禁断の恋がばれ、女性は熊の姿に変えられてしまいますが、子供が知らずにその熊を殺そうとします。それを見ていたゼウスは、親殺しの罪を回避するため、子供も熊の姿にして天に投げて星座にしたといいます。ゼウスは大神のくせに、あまり責任感というものがないようです。ともあれ、おおぐま座がこぐま座を守るようにぐるぐる回っているのはそのためです。ギリシャ神話を知ってると、星の観測も面白くなりますね。
さて、とうとう実際に天文台に上がり、天体望遠鏡を覗く番です。倍率80〜500倍、口径50cmという巨大なニュートン式反射望遠鏡です。その大きさは、はしごに登らないとレンズがのぞき込めないほど。折尾さんが倍率を調整してくれます。
余談ですが、地球が回転しているせいで、普通は観測中でも星がどんどん動いて逃げていってしまうとか。でもこの望遠鏡はきちんとモーターで自動的に星を追いかけているので、見逃すことはありませんよ。雲も月も出ておらず、最高のコンディションです。満天の星空が期待できそう。楽しみ。
まずは、ひときわ輝いて見える金星をとらえました。倍率は180倍。肉眼でも一番輝いていた金星は、太陽の光を反射しやすいせいで、まぶしいくらいに光っています。とても綺麗です。
春の大曲線、春の大三角形を確認、乙女座のスピカもかに座もちゃんと分かりました。やった!ビデオで予習していてよかった。
観測所に設置されたパソコンの画面上でも解説してくれます。今見ている夜空をチェックする、方角を変える、季節を変える、星座の形を重ねるなど・・・いろいろ遊べ、いやいや学べます。ここで折尾さんから教えてもらったのですが、自分の誕生星座が見てみたい人は、誕生日の約3ヶ月前が一番よく誕生星座が見えるそうです。
更に折尾さんの興味深い話は続きます。
折尾さん:「オリオン座の中にあるのが”M78星団”、どこかで聞いたことありませんか?」
〜うーん・・・聞いたことはあるけれど……〜
折尾さん:「ほら、ウルトラマンの故郷ですよ。どうしてこの星団が選ばれたかというと、大きくて目立つオリオン座の中にあるから、ウルトラマンが目印にしやすいからなんです」
へええ!面白い。もしM78星団より目立たない星団がウルトラマンの故郷という設定だったら、「迷子のウルトラマン」なんてシリーズができてたかも。
また、スポーツ用品メーカーのNIKEは、勝利の女神ニケから、清涼飲料水のACQUARIUSも、水に関係する「水瓶座」からなど、星座やギリシャ神話から取った商品名は結構多いんですね。星座のもつさまざまなエピソードから、商品に対するいいイメージを連想させようという魂胆でしょうか。
さらに春の星座にも話がおよびます。乙女座のシンボル・豊穣の女神が持つ稲穂の位置にある一等星スピカも、尖ったものを表し、スパイクの語源にもなったそうです。
話せば話すほどいろんなエピソードが飛び出し、どんどん引き寄せられていきます。全ての星座のエピソードを知りつくしている折尾さん、すごいです。ところが、「いえいえ、まだまだ未知な宇宙の世界、どんどん新しい発見が生まれるので、極めるには一生あっても足りませんね」とか。ううむ、果てしない星のロマンだ。
天文台の人気のシーズンは初夏から夏にかけて。夜空いっぱいの天の川がお目当てです。ところが、一年で最も観測に適しているのは、空気が澄んで乾燥しているので雲が出にくい冬なんです。冬にも天の川はあるし、一等星が多いからです。(一年で見える一等星の実に半分が冬に集中しています)ただ、めちゃくちゃ寒いので、15分も屋外で観測していられないそうです。4月でもかなり寒いのに、真冬は確かにこたえますね。
最近日本にもコメットハンター(彗星発見家)が増えたといいます。童心に返って夢中になれる天体観測、その魅力にとりつかれたら、きっと抜け出せないでしょうね。私もほんの触りながらその魅力に触れることができて、とても楽しかったです。
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