国道3号線を車で走っていると、海に面する広々とした水俣湾埋立地が見えてきます。この水俣湾埋立地は、親水緑地や恋路島、竹林園など緑地化がさかんな美しい公園や、水俣病資料館や水俣メモリアル、環境センターなど様々な学習の場も設けてあります。休日にのんびり過ごすにはとても良いところで、一日500円のレンタサイクルもあります。
その埋立地に、3つのとんがり屋根がユニークな「みなまた観光物産館まつぼっくり」を発見しました。
暑さでバテ気味の私たちを迎えてくれたのは、エネルギッシュな館長の井上さんと、店員さんたちの温かい笑顔でした。冷たい煎茶を入れてもらい、のどを潤します。この煎茶は、訪れたお客さんをもてなすために常時準備してあります。心遣いがうれしいです。
〜この屋根の形はユニークですね〜
井上さん:「このとんがり屋根は、まつぼっくりが3つ立っているようすを表しています。水俣湾の埋立地を”焼け野原”に見たて、その中で一番最初に芽が出るというまつぼっくりを名前に付けました。水俣の情報を真っ先に発信するという意味も込められています。平成8年にオープンしました」
うーむ、なかなか深い意味が込められているようです。
木のにおいがただよう館内は、水俣のあらゆる特産品でぎっしりです。あまりの品数の多さに何から見ようか迷ってしまい、まず井上さんに尋ねてみることに。
〜人気の特産品は何ですか?〜
井上さん:「寒漬、みなまた無農薬茶、サラダたまねぎ、そしてニッケの葉で包んだよもぎだんごでしょうね」
寒漬は、塩漬けした大根を寒風にさらして天日で干し、細切りにして昆布を入れて甘醤油に漬け込んだもので、水俣の昔ながらの味と言えます。
また、水俣は県下最南端という温暖な気候を生かし、県下でもトップクラスの茶産地。
早出し、美味、安全を基本に、減農薬、減化学肥料栽培、無農薬栽培による良質茶を生産しています。香り高くコクのあるまろやかな味が特徴です。
井上さん:「公害を経験した水俣だからこそ、安全・健康なお茶にこだわりました。水俣産だから大丈夫、と逆に安心してもらえるように努力しています。」
先ほどもてなしてもらった「冷たい煎茶」もこの無農薬茶でした。さっぱりしていて苦みもなく、氷を入れて冷やすと夏にぴったりです。(20個入りで800円)
そして、全国放送のグルメ番組でも取り上げられた「サラダたまねぎ」(愛称:サラたまちゃん)は、農林水産大臣賞も受賞しており、絶品中の絶品といえるでしょう。(3kgで800円〜)苦みが少なく、生でそのまま食べられるほどの甘いので、サラダに最適。薄くスライスして水にさらさなくても食べられるそうです。もちろん減農薬、減化学肥料栽培で、これも「水俣だから安心、安全」です。
サラたまちゃんの旬は3〜6月で、あっという間に在庫が切れるほどの人気商品です。残念ながら今はシーズンオフなので、サラたまちゃん自体は販売されていませんでしたが、サラたまちゃんが主原料のドレッシングやクラッカー、漬け物などの「サラたま物語」シリーズがちゃんと作られていました。
他にも、甘夏ジュース、おかし、ジャム、フレッシュ甘夏缶づめなど、柑橘系の食品が多いのに気づき、パンフレットを読んでみると納得。不知火海一帯は温暖な気候もあって、柑橘類の栽培がとても盛んな土地です。中でも、マルタブランドの甘夏(12〜5月が旬)は日本一の味と品質を誇り、清見とポンカンの子、水俣デコポン(12〜5月が旬)も、甘い香りとたっぷりの果汁など高品質を誇り、全国で約半分のシェアを誇るというから驚きです。
実は水俣は、和ロウソクやみかん、たまねぎなど、いろんな日本一がある土地なのです!!
伝統工芸品も充実しており、陶器、ちょんまげの職人さんが作るひょうたん工芸、花柄の上品な手作り和ロウソク、国体の表彰状にも使われる上質の和紙製品、水俣再生の象徴である竹の細工、その竹を使った独特の和紙製品など。
興味深い品では、「綱木紋」といって、貝殻の粉や天然の炭酸カルシウムと木粉からできている工芸品があります。軽くて硬くて丈夫で長持ちするので、植木鉢、花器、プランターなどに応用されています。これも立派なリサイクルの一環ですね。
〜特産品でこだわっていることは?〜
井上さん:「やっぱりお茶やたまねぎを”水俣ブランド”で出荷することです。水俣の名前を全面に出すということは、それだけ自分たちの農作物に自信があるという証拠です。健康と安心にこだわり、水俣の自然や風土に合っているものに100%こだわっていますからね。公害のおかげで、健康の大切さは誰よりも知っています。その水俣の人々が作りだす製品は、無添加で健康的であること間違いなしですよ。
でも、イチオシの特産品を挙げるにはまだまだ発展途上で、今ちょうど既存と新生の特産品がブレンドした状態です。まあ、これから数十年かけてじっくり気長にやるつもりですよ」
自分たちの特産品に誇りを持ち、先を見据えてどっしりと構えた井上さんの言葉は印象的でした。
さてこの物産館には、水俣の観光地を大型スクリーンで紹介するコーナーもあります。
水俣に来たらまずここで予習するのも良いかもしれません。
所要時間13分の中で、美しい映像と共に心和む音楽、自然の音が流れます。不知火海、湯の鶴七滝、お茶畑、竹林園、秋に紅葉する櫨の木などの自然の美しさや、福田農場、タチウオ釣り、寒川そうめん流しなどの美味づくし、湯の児海水浴場、湯の児温泉、湯治客の多い山中の湯の鶴温泉などのリゾート地、活気ある港まつり、徳富蘇峰生家などの歴史スポットなど、バラエティに富んだ内容です。
〜人気の観光スポットはどこですか?〜
井上さん:「やっぱり温泉ですね。最近は公園化が進む埋立地も観光客が増えています。水俣は海、山、川全てが揃っている条件のいい場所ですし、水俣病のおかげと言うか、レジャーランド化されてもおかしくない海岸線が自然のまま残っている点もポイントですよ」
べた褒めですねー。地元の方の熱い郷土愛を感じてしまいました。桜並木が見られて、サラたまちゃんが出回りはじめる春と、海で遊べる夏が人気があるそうです。
まつぼっくりの隣には、地元の素材を生かした料理が食べられる「味の駅たけんこ」が建っています。
〜人気のメニューは何ですか?〜
井上さん:「材料は全て地元産というだんご汁セット(680円)がダントツです。どうぞ、食べてみてください」
わあ、いいんですか?さっそくいただきます。白い亀の箸置きがかわいい。水俣のシンボル、竹を割った器におにぎりが乗せられていて、なんだか上品な感じです。寒漬は歯ごたえがあり、適度の甘さと味の濃さが最高。ご飯がどんどん進みます。そういえば寒漬は、水俣特産の櫨の木にかけて干しておくのだとか。寒漬、櫨の木という特産品同士の意外な結びつきでした。
〜水俣の郷土料理は何ですか?〜
井上さん:「不知火海で昔からよく捕れた太刀魚料理です。唐いもにメリケン粉を付けて揚げたがねあげもおいしいですよ」
がねとはカニのことで、形が似ていることから付けられました。戦時中、本物のカニは高価で庶民には手の届かない存在だったので、代わりにがねあげを食したのです。
ところで、太刀魚料理は、普段メニューに載っていないのですが、今回は特別にご馳走してくれました。昨夜まで海で泳いでいたとれたて新鮮なタチウオの刺身を作ってもらいます。
ぷりぷりした白身を箸でつまみ、口の中に運びます。柔らかい食感に、味は淡白でさっぱり。ほんのり甘くて、もう幸せー。ワサビ付きの醤油でおいしくいただきます。
このように、メニューに載っていない料理でも、要望に応じて提供してくれるそうです。ワガママを聞いていただいて、本当にありがとうございました。 |