熊本の地中海・水俣でリゾート気分 不知火海沿岸のレジャー&グルメ


 

 水俣川の河口に沿って海の方へと向かうと、山をぬってくねくねとカーブを描く険しい坂道にさしかかります。高さ30mほどの急崖で、1kmほど木陰が続いています。

 その木陰は、今はただの林にしか見えませんが、春にはみごとにピンクの花を咲かせる1万本の桜並木。絶好のドライブコースといえます。坂を上りきり林をぬけると、眼下に湯の児海岸のパノラマが広がります。見渡すかぎり、青い海、青い空、入り組んだ海岸線。車を降りてじっと見ていたい景色です。

 道のすぐ真下の海岸線に、12軒の温泉旅館・ホテルが軒先を競うように並んでいます。そのホテルの中でも、「大洞窟風呂・山海館」の文字がある茶色のビルはひときわ目につきます。「洞窟風呂」って一体なんだろう?ワクワクしながらドアをくぐります。

 ロビーは5階にあり、一面ガラス張りの壁の向こうには、太陽でキラキラ光る紺碧の海。左手から雲仙岳、竜ヶ岳(天草下島)、宇土半島、手前には湯の児島がくっきり見えます。とっても気さくな女将さんに、洞窟風呂について、そして湯の児温泉について尋ねてみます。

〜まず、湯の児温泉の歴史、由来を教えて下さい〜

女将さん:「昔、景行天皇が熊襲討伐の際に、暗夜のため不知火海で進路を迷い仮泊しました。不知火海沿岸の”泊””京泊””舟がくし”などの地名は、当時の名残です。その景行天皇が、この近くの海中から湧出している温泉を発見し触ってみると、お湯がぬるかったので、”これはまだ温泉の子供だ”と言ったそうです。それから”湯の子”と呼ばれました。また昔、大ウミガメが荒波で傷ついた体をお湯で癒していたのを発見してから、天然の渚にそのお湯を古い舟に溜めて入ったのが、湯の児温泉のはじまりだそうです。それで湯の児温泉は、別名”亀温泉”ともいいます。正式に掘り当てたのは大正14年からです」

 景行天皇は、大和国家が全国統一をしたころ(四世紀)の人物です。九州路をいそぐ景行天皇へ向けた歌が万葉集にも載っており、その碑が不知火海沿岸に建てられています。1600年も昔の伝説が色濃く残っている湯の児、意外な歴史スポットとの出会いです。

〜山海館の開業はいつですか?〜

女将さん:「昭和30年です。開業してすぐ洞窟風呂が完成しました」

〜洞窟風呂を作ろうと思ったキッカケは?〜

女将さん:「洞窟の岩盤が意外と硬いことがわかり、ノミ一本で手作業で掘った洞窟に、温泉を入れてみたんです。今まで地震があっても、崩れたことはありません。昔は完全混浴でしたけど、のちに女性専用の洞窟を掘ったりして、4つの浴槽を持つ大洞窟温泉へと成長しました。洞窟の長さや歴史からいくと、九州ではかなり珍しいお風呂でしょうね」

 ええ、もちろん話題性十分ですよ。子供から”ここがいい!”とせがまれて来たお客さんもいるそうです。私も、洞窟とか露天風呂とか、非日常的なシチュエーションに弱いんですよ〜。珍しいこともあって、春は新入社員研修、夏は家族旅行、秋は社員旅行などで大にぎわいだそうです。

 いざ入浴へと洞窟風呂のある1階へと向かう途中、エレベーター乗り場で「世界の亀展示コーナー」を発見。陶器や布でできた亀の人形がたくさん飾られています。どうやらホテルの方々のコレクションのようです。アジア、アメリカ大陸、ヨーロッパなど・・・世界中を旅しているんですね〜すごい。
 案内してくれたフロントの方によると、亀を神のように奉る国、単なるおもちゃとして扱う国など、国によって亀の捉え方が全く違うそうです。

 ところで、すぐ南の鹿児島県出水市はツルの渡来地で有名な町。鶴のまち・出水市と、亀のまち・水俣市で、鶴亀ツアーを実施しているとか。おもしろい発想ですね。

 エレベーターもガラス張りで、眼下には透き通ったエメラルドグリーンの海水がばっちり見えます。日本のきれいな海に選ばれたという文句なしの美しさです。「もっと透明な時がありますよ」とフロントの方のさりげない一言がニクいです。

 一階は古風な温泉旅館。渋い木造の部屋が並ぶ廊下の奥に「大洞窟風呂」の入口が待っています。昼間で人がいないのを見計らって、男湯の方から探検していきたいと思います。

 これが男湯(月千洞)の入口です。湯けむりの中にぽっかり開いた洞窟が、神秘的な雰囲気を漂わせます。足をつけると、お湯は意外と熱く、”弱アルカリ性重曹泉、湧出温度52度”と書いてあります。飲用すると胃腸病に効果があるそうです。

 深さは私の太股くらいでしょうか、じゃぶじゃぶと水をかき分け洞窟内部へと入ってみます。

 道は一直線で、しばらくすると後から掘ったという女湯からの洞窟とX状に交わります。女湯洞窟の通路にはちゃんと竹の扉が設けてあり、「ここから先は女湯です」と注意書きがあります。フロントの方に「この部分だけ混浴ですけど、何か事件とかありました?」といじわるな質問をすると、苦笑しながら答えてくれました。

フロントの方:「酔っぱらい客でたまにたちの悪い人がいますね。交差地点で待ち伏せしている人や、ひどい人になると、潜って女性客を待っていたお客さんもいました」

 おいおい・・・そこまでする?ちょっと呆れてしまいますね。女湯には、「宴会の後には泥酔したお客さんがいるので、できるだけ女性専用ギヤマン風呂をご利用ください」と張り紙が・・・あまり他の人に迷惑かけちゃいけませんよ〜。

 まあそこまでハメを外す人はめったにいないそうなので、ご安心を。

 女湯(遊龍洞)から行ってみると、洞窟はさらに細く狭くカーブが多く、より神秘的です。湯けむりと薄明かりで、あまり先が見えないのがまたスリル満点。壁を伝っておそるおそる歩いていくと、出口の方からぼんやりと光が差しこんできました。

洞窟の行き着く先は、海に面した大浴場「露天泡の湯」です。薄暗い洞窟から出てきたばかりなので、すっきりと晴れた青空と海がとてもまぶしい。テラスにも湯船があり、太陽の光をいっぱい浴びながら温泉に浸かれて、目の前に不知火海の大パノラマを眺めることができます。まさに開放的という言葉がぴったりです。

 夜は湯船の底からライトアップされ、幻想的なムードが味わえます。男湯と女湯をしきるのは、水俣市のシンボルである竹製の衝立です。

 また洞窟を歩いて、脱衣所に戻ってきました。風呂上がりの体はぽかぽかして気持ちいいなぁ。ここには洞窟風呂のほかにも、男湯にはドライサウナ、女湯にはミストサウナが付いており、屋外にはユニークな亀の浴槽もあったりします。

 湯上がりはやっぱりお腹がすく、という私と同類の方、お待たせいたしました。水俣名物・太刀魚料理の紹介です。

 太刀魚は太刀魚科の白身魚で、淡白な味ゆえに刺身、塩焼き、南蛮漬け、唐揚げ、ムニエル、煮付けなどいろいろなバリエーションが楽しめます。鱗がないので料理しやすいのもうれしい。骨の付き方も変わっていて、比較的簡単に骨が取れます。

 不知火海では、昭和初期から観光漁船が出ていたほどの人気ぶり。水俣産の太刀魚は、長く太っていて厚みがあると評判で、太刀魚釣りだけを目当てに来る常連さんも多いそうです。

 湯の児温泉の宿には、それぞれ太刀魚釣り船の乗船所が備えてあります。

 船頭さんがいろいろ指導してくれるので、初心者や女性・子供でも簡単に釣れます。クーラーボックスさえ持ってくれば手ぶらでOK、あとは全て準備してくれます。発泡スチロールのクーラーボックスも販売しています。

 太刀魚釣りのシーズンは4〜11月、ちょうど今だったら太った子持ち太刀魚が釣れるそうです。日の出・日の入りにしか釣れないので、早朝4時(!)か夕方の5時ごろ出航し、片道30分かけて沖に出ます。

 全ての所要時間は3時間ほどかかります。時間があったらトライしてみては?波が高いと出航中止になるので、海の状況を調べてから予約した方がいいかもしれません。毎年9月15日には「女だけの釣り大会」があるそうです。参加してみようかな・・・。

 太刀魚釣りしたことあります?と女将さんに尋ねると、とても楽しそうに話しはじめました。

女将さん:「太刀魚の名前は、海底を立って泳ぐ”立ち”と、銀色のシャープな姿が刀に似ている”太刀”から来ています」

 えっ、そうだったの!?本当に立って泳ぐんだ!

女将さん:「漁船の片側に最高8人がずらっと並んで漁をするんです。人数があんまり多いと糸がもつれるので、それ以上は船に乗れません。キビナゴをエサに、釣り糸を垂らし、引きの感触を素手で味わいます。糸をたぐり寄せるたびに人差し指の第一関節の皮膚がこすれて、剥がれて痛いんですよね。玄人の方より、女性や子供など意外と欲のない人の方が釣れたりするのがまた面白いですよ。店で買うのと違うのは、自分で釣ったという満足感にひたれて、新鮮なまま低価格で調理するので、味だってもちろん抜群ですよ!」

 新鮮な刺身なんかきっと最高でしょうね!!コリコリとした食感・・・想像してしまいます。

 女将さんは、全国初の温泉酒「湯上がり乙女」という清酒をお土産にと持ってきてくれました。山海館の温泉水を使って、日本最南端にある清酒蔵・亀萬酒造が作ったものです。(水俣より以南は焼酎蔵しかないそうです)温泉の柔らかい口当たりをそのまま生かし、女性に大人気だそうです。いただきまーす。

 最後に、水俣をとても愛する女将さんに、水俣自慢をしてもらいました。

女将さん:「水俣は今、水俣病から再生して、環境問題に真剣に取り組む町へと変化を遂げました。ゴミの収集や分別は日本一といわれ、それだけ環境問題に対する意識も高いんです。最近は修学旅行で、長崎、広島、沖縄などの平和学習から、水俣での環境学習へと移行する学校も多いんですよ。観光面でも”亀の町”など新しい切り口で、プラス思考で行こうと思っています」

 大洞窟風呂や、美味しい太刀魚や清酒、そして新しい水俣についての話など、いろいろとありがとうございました。

●お問い合せ
山海館
水俣市湯の児温泉
TEL(0966)63-1092
宿泊料金:一泊二食付き12,000円〜。(料金は相談可)
食事休憩料金:5,000円〜。
太刀魚漁代金:5名まで16,000円。6名から1,000円追加、8名まで。
平日入浴のみ(10:00〜15:00)大人700円、子供500円。

インデックスページに戻る


 copyright since 1995 AD SCCAT SYSTEMS 白木メディア株式会社